我が国においては、公式教育や公的職業訓練に関しては法律等が定められていますが、教育・訓練サービス業界全体を網羅する学習サービスの質保証に関する法律やガイドラインはなく、各業界団体や各事業者の自主的な取組に任されており、業界で定められたガイドラインや基準は業界ごとに異なるというのが現状です。
また、大学、短期大学及び高等専門学校では、学校教育法等により、文部科学大臣が認証する認証評価機関による第三者評価を受けることが義務付けられています。それらの組織では評価方法についても規定されていますが、専門学校や各種学校、職業訓練施設、研修サービス事業者等、多くの教育・訓練サービスについては、業界団体の自主的な取組により様々であり、統一的な評価方法も確立されていないのが現状です。
学習者は、語学学校や学習塾等の教育・訓練サービスを利用する際、個々の学校の目的やニーズに合った学習サービス事業者を選択することになりますが、客観的な選択の指標が特にないまま事業者を選ばなくてはならないことが少なくありません。授業料の面では、中途解約に関するトラブルも多く、学習者が被害を受けるケースも見られました。そこで、1999年の特定商取引に関する法律(特商法)の改正等で改善が図られました。
その後、不況等による学習サービス事業者間の競争の激化や語学学校の破綻により消費者の目が厳しくなる等、学習サービス事業者を取り巻く環境が変化する中で、学習サービスの質の保証に関する必要性が高まりました。
一部の業界団体は、学習サービスの質の保証や向上に積極的に取り組んでいますが、学習サービス事業者全体を包含する業界横断的な規格の開発は、我が国では依然として遅れています。
ISO 29993やISO 29991認証の取得が進めば、同認証取得の有無は、学習者が学習サービス事業者を選択する際の客観的な指標となることが期待できます。
また、学習サービス事業者がISO 29993やISO 29991の要求事項を遵守することで、学習サービスの質が向上し、様々な学習サービスに関わるトラブルが減少することが期待できます。
一方で学習サービス事業者にとっても、ISO 29993やISO 29991認証を受けることにより、顧客の信用度を向上させるとともに、グローバル市場に参入する際に他社との差別化を図り、競争力を強化できるというメリットや、ISO 29993やISO 29991の要求事項を遵守することで、事業者の体質を改善し、提供するサービスの質を向上させられるというメリットがあります。
また、有能な人材を欲している求人企業にとっては、ISO 29993やISO 29991認証を受けた学習サービス事業者で学習した者であるかどうかを人材獲得の際の目安として活用することもできます。